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つながりを求めて

2015年05月25日(月)

スキルス胃がんと告知され、リレー・フォー・ライフ・ジャパン広島に、2009年の第1回から6年連続で参加されている皿海(さらがい)さん。ルミナリエステージでのスピーチではこう語っています。「5年生存率、あるいは余命宣告の数字は過去の統計に基づくもので、必ずあなたに当てはまるものではない」。

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リレー・フォー・ライフ・ジャパン広島での後ろ姿(毎回ゼッケン着用)。

「やっぱり気後れするよ、個人参加だと」。
第1回リレー・フォー・ライフ・ジャパン(RFL)広島で行われるサバイバーズラップ(がんと闘ういのちのリレー、皆で一緒にあるきましょう)に備え、整列しているときに感じた。患者会等チームで参加される人たちは立派なフラッグを掲げ、そろいのユニフォーム着用。誇らしげに前方に整列している。だけど私だってがん患者、それに先頭を歩く実行委員会のフラッグには私の手形も押してある。胸を張って行進しよう。

私がRFLという言葉に初めて接したのはランニング情報誌。RFL芦屋が開催されたという内容。当時がんは死を意識せざるを得ない病気と思っていたが、患者たちがとても楽しそうに参加している。不思議な魅力を感じる。そしてウォーキングは私の趣味。「もう少し近くで開催されたらぜひ参加したい」と思った。

願いが通じたのか2009年9月広島市で開催。それも広島カープの本拠地だった旧広島市民球場。喜び勇んでの参加だ。「マイペースで歩きましょうね」「どちらから来られたのですか」歩いているとだれかれとなく声をかけてくださる。RFLは温かいな、気後れする必要はないのだ。

「スキルス胃がんの方ですね。ルミナリエステージであなたの思いを話してもらえませんか」実行委員に声をかけていただく。「スキルス胃がんに負けないぞ!」と記した手作りしたゼッケンをTシャツの背中に着けて黙々と歩いているのが目にとまったとのこと。スキルス胃がんは進行が早く、生存率が低いといわれているだけに、少しでも役に立てれば望むところと思い了解する。
 
ステージでは次のことを中心として話した。
・2006年1月、「腹膜播種したスキルス胃がんであり、現時点での手術は不可能。抗がん剤治療を優先しよう」と告知された。
・抗がん剤の効果が予想以上で8月に胃、胆のう、脾臓を全摘する手術を受けた。
・2009年12月、フルマラソンに参加予定。

会場で聞いている多数の人に拍手をいただくと同時に応援していただく。「よし、しっかりトレーニングをし、完走しよう。完走したら来年のRFLで報告しよう」と強く思った。

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第3回リレー・フォー・ライフ・ジャパン広島の閉会式にて。

あれから6年。RFL広島は広島、尾道、福山と毎年会場を変えて開催された。参加される患者の負担が少ないように。また、県内各地にRFLを広めるために。私は2回大会にはボランティアとして、3回目からは実行委員として参加させてもらっている。

続けて参加していると、多数の知人ができ、人と人とのつながりを実感できる。同時に多くの情報を得ることもできる。ところが前回親しく話した人に会えないことがある。知人に尋ねると、「症状が悪化し、入院中」あるいは残念だが、「再発し、亡くなられた」というケースもまれではあるが出くわすことがある。RFLはまさに命のリレー。人の命に限りがあるのだから、大切に、ていねいに生きたい。RFLで共に活動できることを大切にし、がん患者のために何ができるかを考えたい。

幸いなことに、私は第1回以来連続してルミナリエステージでスピーチをする機会をいただいている。そこで、私の訴えの基本的部分を記す。

参加者の中に5年生存率、あるいは余命宣告の数字を告知された人はいるだろう。私自身「手術は成功したが、5年生存率は10%余。元気になった人はほとんどいない」「抗がん剤が効かなかったらあと3カ月程度という状態でした」と告げられたことがある。こういう数字は過去の統計に基づくもので、必ずあなたに当てはまるものではない。自分に都合よく解釈すればいい。現に私は職場復帰し、フルマラソンを完走している。前例がなければ自分が前例となるような生き方をすればいい。

RFL広島の知名度は向上しているといえる。内容も回を重ねるごとに充実しているように思う。2日間の行事としては成功と言えるだろう。ただし、がん細胞は24時間365日休むことなく活動している。がんはメンタル面の影響が強い病気でもある。がん患者が孤立・孤独を感じないように何らかの形でRFLとつながっていることは大切。そのために何ができるだろうか。まずはホームページそしてフェイスブックや・ブログの充実が大切であろう。インターネットを通してではあるが、いつでもどこでも誰かとつながっていると実感してもらえるRFLであればいいと思う。そして地域で行われるがん関連の行事にチラシ持参で参加できたら。人は誰かとつながっていると実感できると生きる意欲が増すはず。

私は今年(2015年)8月で術後9年を迎える。「スキルス胃がんに負けないぞ!」のゼッケン、そろそろ「スキルス胃がんを乗り越えて」と記しなおして9月のRFL広島に参加しようか。新たな出会い・つながりを求めて。

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プロフィール
皿海英幸
1953年生まれ。62歳。
広島県府中市在住。
現在障害福祉サービス事業所にサービス管理責任者として勤務。
2006年1月腹膜播種したスキルス胃がんと告知を受ける。
抗がん剤の治療を行い8月に胃・脾臓・胆のうの全摘手術を受ける。
2009年12月、宮崎市で開催されたフルマラソンを完走。
以後5年連続して完走。趣味はエッセイ。
RFL広島のホームページ内「がん友のエッセイ」に掲載。