「私一人で頑張っているのではない、常に感じた大きな励まし」
日本対がん協会が、米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの協力で実施している研修プログラム「RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞」の第1回目(2010年度)の受賞者、増田紘子医師(国立病院機構大阪医療センター)が6月2日、米臨床がん学会(ASCO)がん征圧基金の「ブラッドリースチュアートベラー特別賞」を受賞しました。
増田さんからリレー・フォー・ライフにかかわる皆さん、並びに、日本対がん協会の関係者にメッセージが届けられました。
RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞の第1回目の研修生
増田さんからのメッセージ
ブラッドリースチュアートベラー特別賞という、最も優秀な研究に贈られる賞を受賞でき、本当にありがとうございます。リレー・フォー・ライフ、対がん協会のみなさまには、本当に素晴らしい機会を頂いたことを心から感謝しています。本当にありがとうございました。
ご寄付を頂き、研修させていただいたことは、私にとって、責任感、プレッシャーを感じることもありましたが、何より、大きな励ましでした。私一人が頑張っているのではないことを、常に感じられ、本当にありがたかったです。
帰国して何人かの患者・ボランティアの方々とお会いする機会があり、直接お礼をお伝えすることができて、本当にうれしかったです。みなさんが、私たち若手医師を育てて下さっていることをこの賞を通して感じていただければ幸いです。
この先生を育ててよかった、と皆さんに思っていただけるような医師になれるよう、これからも頑張っていきたいと思っています。留学は私にとって代えがたいすばらしい経験でした。本当にありがとうございました。
米臨床がん学会がん征圧基金の特別賞
乳がん研究で高い評価
ASCOの年次総会(5月31日~6月4日)では、発表されたフェローやレジデントの数千の研究を対象に、特別プログラム委員会が100人の優れた研究を選び、「メリット賞」を授与しています。その中でより優れた研究4つに特別賞が贈られます。増田さんが受賞したのはその4つのうちでも最高位にあたる賞。非常に高い評価を得たわけで、将来のがん医療への貢献が大いに期待できそうです。
増田さんの研究は、「トリプルネガティブ乳がん」と言われる、悪性度が高い乳がんの基礎的な研究。乳がんの治療では、そのがんにどんな特徴があるのかを遺伝子レベルで調べて抗がん剤やホルモン剤の治療を工夫しています。「トリプルネガティブ乳がん」は、その名の通り、乳がん治療のポイントと考えられる3つの遺伝子が、いずれも働いていない(ネガティブ)という特徴をもち、有効な治療法の開発が望まれるがんです。
増田さんは、マイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞で研修に行った米国テキサス大学MDアンダーソンがんセンターで、このトリプルネガティブ乳がんについてさらに詳しく研究。7つのサブタイプがあり、手術前の抗がん剤治療の効果を予測できる可能性があることがわかりました。ASCOでは、研究の中で、そのうち治療効果が低い2つのタイプについて、効果的と考えられる治療法の可能性を示しました。
実際の治療に役立てるには、さらに研究を重ねなければいけませんが、「トリプルネガティブ乳がん」とひとくくりにされてきた乳がんについて、それぞれのグループを確実に判断できれば、それぞれにより適した治療法の開発・選択につながると期待されます。