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2025年07月15日

「絵本戦争」を読んで

「絵本戦争」を読んで(2025年7月15日)

 「えっ!これは何」日曜日の中国新聞読書ページ、「絵本戦争 禁書運動 伝わる危機感」というのを読んで感じた。

 私は三~四年前からだろうか、スキルス胃がんの患者・家族を支援する希望の会が主催する「絵本を読む会」を楽しんでいる。そこで「絵本」と見れば関心が向きやすいが、「戦争」とはどういうこと?

 そこでこの本を取り寄せてみる。表紙の帯には「年間四千冊が図書館から消された!?」とある。早速読んでみる。

 目次を見ると第一章 黒人 第二章 lgbtq 第三章 女性 第四章 障害 第五章 ラティーノ/ヒスパニック 第六章 アジア系 七章 イスラム教徒 第八章 アメリカ先住民 とある。

 第五章だが、ラティーノとはラテンアメリカ諸国の出身者とその子孫をさし、ヒスパニックはスペイン語話者とその子孫をさす。つまり、五章は出身国もしくは言語によるグループであり、人種ではない。

 ところでアメリカが、現在直面している禁書問題は、政府によって禁書にされ、入所方法が全く無くなったというものではない。約一万三千ある学区が禁書を指定し、その学区にある学校の教室や図書室から本を排除しているというものである。

 そういう内容を含んでいると知って、この本を読んでみる。禁書となった本の内容を紹介するものだが、ほっこりするというか、心が落ち着くような本が多い。アメリカでは禁書だが、日本では発売されており、購入することができる絵本が十冊余はある。「購入してみようかな」と私も思う本が結構ある。

 以前、「ルーツ」という本がはやったことがある。アメリカの黒人奴隷制度を正面からとらえた本であり、テレビでドラマ化され、そちらもヒットした。多くの人は、「自分の祖先はどうなのか、どこから来たのか」ということに関心があるということだと思う。

 ルーツのヒット以来、自分たちの会話の中にも「ルーツ」という言葉はよく出てきた。だから「絵本戦争」の目次にあるように、黒人、lgbtq、女性 といった自分に関することは知りたいと思うだろう。そして子供はもちろん、大人だって絵本という絵と文章で表現してあるとわかりやすい。

 府中市民病院待合には「いろいろな体験を積んだあなただからこそ、感じることのある絵本を置いておきます。読んでみてください」と記したポスターとともに、並べてある絵本があった。

 アメリカで現在、禁書になる絵本が多いのには、保守的な白人の人たちが、「自分中心つまり白人のキリスト教中心の考え方を大切にしよう」という考え方を推し進めようという説がある。「トランプ支持者である保守派の声がトランプ再選とともにますます大きくなっていった」と言えるという人もいる。

 ところで「絵本戦争」というくらいだから、禁書運動に対抗している人たちの動きも紹介しておきたい。

 非営利団体ペン・アメリカとアメリカ図書館協会(ALA)が代表的な団体だ。

 ペン・アメリカは一九二二年に設立された団体。児童・生徒ならだれでもアクセスできる学校の図書室の重要性、その図書室から本が排除されることの深刻な危機を訴えている。

 ALAはペン・アメリカと異なり、学校の図書館だけでなく、公共図書館での禁書申請も、問題視している。

 私は「絵本を読む会」で、くつろぎ、ほっと一息入れられることを楽しみにしている。それだけに「絵本戦争」という表現を使わざるを得ないアメリカの現状を悲しく思う。禁書にしなくても、良書でなければ読む人が少なくなっていく。それでよいのでは。子どもも大人も絵本により、様々な体験を積むことで、成長することができればと思う。

 参考図書 絵本戦争 著 堂本かおる
               太田出版