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研究テーマ(Research theme)：
Tumor infiltrating lymphocyte in Breast cancer

研究成果(Research result)　-Article/Presentation at the congress論文・学会発表-：as of August, 2018
乳癌における標準治療は手術、化学療法、ホルモン療法、放射線療法がメインですが、新たな治療法として期待を集めているのが免疫療法です。現在では悪性黒色腫や肺癌で免疫チェックポイント阻害剤が劇的な効果を示し、病状の改善並びに生存率の向上に寄与しています。しかしながら同様の薬剤を使用しても、乳癌における免疫療法の治療効果は現在まで目立ったものはなく、他の癌腫とは別な工夫が必要と考えられています。そこで私が留学中に行った実験は、乳癌の癌細胞の周囲にあるリンパ球がどのような働きをしているのかを解析し、乳癌治療に使えないかを調べる基礎研究を行いました。もともとは免疫原性が高い悪性黒色腫（メラノーマ）で検討されていた方法なのですが、手術で採取したがんのサンプルの一部をすりつぶし特殊な培養液で培養することでリンパ球が増殖していきます。私の所属した研究室ではこの培養したリンパ球（tumor infiltrating lymphocyte: TIL）を増やし患者の体内に戻すという臨床研究をしておりました。この方法により悪性黒色腫の患者さん予後が劇的に改善したことが臨床試験で証明されています。この実験をもとに乳癌の手術サンプルを使用した実験を計画しましたが、悪性黒色腫と同じやり方では乳癌のリンパ球は増えないことがわかり、次にリンパ球を活性化する4-1BB/CD137抗体という薬剤を用いてがん組織をかたまりのまま培養しリンパ球を刺激し増やし解析を行ったところ、9名のトリプルネガティブ乳癌の患者さんのサンプルで乳癌細胞の周囲にあったリンパ球を増やすことができました。さらにこれらのリンパ球はターゲットの細胞を攻撃することが確認されています。留学させていただいた2年間で、今まで乳癌ではわかっていなかったリンパ球の働きを知り、それが治療に結びつく可能性がある結果を得られました。実用化までは長い道のりですが、この時期経験した貴重な体験をさらなる乳癌医療に役立てていきたいです。