10月12-13日、「リレー・フォー・ライフ・ジャパン2013高知」が市中心地の高知城に隣接する城西公園で開催されました。両日共に真夏を思い出させる日差しの中、24時間昼夜を問わず、多くの方々が参加。親子連れからお年寄りご夫婦までさまざまな年齢層が集まり、チームも高知県、高知市、医療機関、患者会、サバイバーなど42を数え、活気のあるリレーとなりました。
今回で6回目を迎える開会式では、県知事と県議会議長からのあいさつがあり、高知県の行政サイドがリレーをしっかり認知していることをうかがわせました。またこの二人は初開催から毎回参加しているとのことで、リレーのもつ魅力と意義をよく理解しているようでした。その後、サバイバーズウォークが始まり、翌日午後0時までのリレーがスタートしました。
この会場のウォーキングコースにはちょっとした工夫がありました。それはよく見かける1周約200メートルの楕円形のトラックが二重になっていて、そこを周回して歩くのではなく、途中で内側のコースに移動して逆方向に歩くというのです。すると今来た外側のコースの人とすれ違うことになり、お互いに顔を見合わせ、より親密感が増すとのことでした。そのコースがトラックの右と左に作られていて、参加者は常に他の参加者とのすれ違いを繰り返していました。
そんなウォーキングが続く中、ステージでは各ブースの紹介に始まり、地元大学生有志によるアカペラ合唱、松浦喜美夫実行委員長による「消化器系がん」に関するクイズ、ウクレレ&オカリナ演奏、仮装大会などが、適度に間をあけながら観客を楽しませていました。
一通りイベントが終わるとプロの歌手によるライブが始まりました。最初は高知のシンガーソングライターのしまむらかずおさんと子どもグループクルック・ソングメイツの踊りと歌でした。しまむらさんと子どもたちの固いきずなが感じられる、躍動感あふれるダンスが観客を楽しませていました。しまむらさんはこの大会のテーマソング『ひかりのカノン』を制作して以来、ずっと関わってくれている大のリレーファン。今回もチームを作りメンバー交代で朝まで歩き続けてくれました。
次に始まったのが高知県四万十川生まれの堀内佳さんによる弾き語りでした。その頃にはすっかり日が落ち、ステージの上でひとりギターを抱えた堀内さんに青いライト当たります。最初の曲は山口百恵の『秋桜』。透明感ある歌声と嫁に行く娘の母に抱く万感の思いがこもった歌詞が会場に響き渡ります。歩く人も含めリレー会場のすべての人の耳が堀内さんの歌声に傾けられます。いったいどんな歌手なのでしょうか。
堀内さんは目が見えません。1歳の時、先天性網膜膠腫(目の癌)により両眼球を摘出したのです。5歳の時、親元を離れ高知市の高知県立盲学校に入学。中学生になった頃からレコードなどの音だけを頼りに、独学でギターを弾き始めバンドを結成しました。高校卒業後は鍼師(はりし)として働きながら、音楽活動を続け、ラジオパーソナリティとしても出演を始め36歳の時にプロミュージシャンとして一本立ちしました。その後は多くの人から認められ、順調な活動を続けていました。そんな2008年9月、悪性リンパ腫にかかり入院を余儀なくされました。プロ活動10周年のコンサートツアー最後ライブを目前に病に倒れたのです。
ちょうどそのころ2008年10月、RFLジャパン高知が初めて開催されました。そこにがんと闘う堀内さんを励まそうと友人たちがチームを結成し参加、歩きながらその様子を病室の堀内さんに画像で送ったそうです。その時堀内さんはみんなが自分のために歩き続けてくれた姿に深く感動。ただ歩くだけなのに、サバイバーに大きな生きる力を与えてくれるリレー・フォー・ライフのもつ力を知り、次の年から自ら参加し歌ってくれるようになったとのことでした。
歌う合間に堀内さんは観客に語りかけます。現代に生きる多くの子どもたちは自分に自信をもてないでいる。きらびやかなインターネットの世界と自分が今生きている世界を比べた時、現実はあまりに暗く、そのギャップを受け止められないのではないか。庭の花の美しさ、昼飯がおいしかったことに素直に感激してほしい。そして自分を嫌いにならないでとメッセージを投げかけます。続けて7曲、会場に堀内さんの歌声が届けられ、夜はさらに深まっていきました。
その後のルミナリエセレモニーでは会場にいる参加者全員がウォーキングをやめ、エンプティテーブルを囲みました。そして各人の思いをこめながら詩の朗読を聞きました。それを会場全体に置かれたルミナリエの袋1500が包みます。ロウソクの灯りがゆらめき幻想的な時間が続きました。ふと見上げると高知城の天守閣が紫色にライトアップされていました。これも県庁のRFLジャパン高知への協賛とのこと、ウォーキングを続ける参加者を静かに励まし続けているようでした。
翌日は松浦実行委員長による消化器系がんのQ&Aに始まり、キッズダンス、高知県警による吹奏楽と続きファイナルラップへと続きました。24時間歩き続けたチームメンバーに笑顔がはじけます。がんになっても一人じゃないんだと実感できるこの瞬間はどこのリレーでも感動的です。その後、優れた仮装チームを表彰し、最後はしまむらさんの指導で手話を交えながら『ひかりのカノン』を参加者全員で合唱、実行委員長の感謝のことばで高知のリレー・フォー・ライフの幕が閉じました。
2日間、RFLジャパン高知には多彩な参加者が集まりました。それは地元自治体、医療機関や患者会の関係者、その他にも歌手、学生、親子づれなど幅広い年齢層の人々たちでした。高知のリレーはなくてはならないものになっている、そんな実感を抱かせる大会でした。
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2013年10月19日