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2016年度RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞

2016年度RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞
喜多久美子氏、西本光孝氏、宮内栄作氏に決定

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターとシカゴ大学医学部へ

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前列左より 宮内氏、西本氏、喜多氏
後列左より 垣添会長、秋山理事長、上野直人氏、ケネス・コエン氏

 日本対がん協会は4月24日、東京・千代田区の有楽町朝日スクエアで「リレー・フォー・ライフ(RFL)マイ・オンコロジー・ドリーム(MOD)奨励賞」の2016年度の授賞式を開催した(協力:米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター、シカゴ大学、一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクト)。
 同賞は日本対がん協会が各地の実行委員会と共に開催しているリレー・フォー・ライフ・ジャパンに寄せられた寄付金をもとに、地域のがん医療の充実を図るために2010年度に設けられた米国における1年間の留学研修プログラム。全米有数のがん専門病院であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンター、シカゴ大学の協力と、一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクトの支援の元にこれまで12名の若手医師を米国に送りだしてきた。
 今年度の受賞者は聖路加国際病院乳腺外科の喜多久美子医師(36歳)と、大阪市立大学大学院医学研究科の西本光孝医師(36歳)、東北大学病院呼吸器内科の宮内栄作医師(37歳)の3人。喜多医師と西本医師がMDアンダーソンがんセンターで、宮内医師がシカゴ大学医学部でそれぞれ1年間研修する。
 はじめに秋山耿太郎日本対がん協会理事長が3人の受賞を発表し、MDアンダーソンがんセンター・シニアバイスプレジデントのオリバー・ボグラー教授からのビデオメッセージに続いて、MDアンダーソンがんセンター腫瘍内科の上野直人教授が奨励賞と、シカゴ大学医学部血液腫瘍内科のケネス・コエン氏が奨励賞と目録を贈呈し、受賞者が喜びの言葉を述べた。
 最後に垣添忠生日本対がん協会会長が、すばらしい研究環境で貴重な経験を積んでほしいと受賞者を激励した。
 授賞式の後は、日本のがん研究の進展に向けた日米医学交流の重要性、臨床試験を推進するがん専門医の育成プログラムに関する特別講演が行われた。
 はじめに、上野直人教授が「がん臨床バイオロジストの育成のための腫瘍内科プログラムの必要性」と題して講演した。上野教授は「必ずしも直接患者に関わる医師であり続ける必要はない。製薬会社に入ることでがん医療全体のレベルを上げることもできる。本当の挑戦は、日本に帰ってきてから。患者中心のがん医療を実現するため、将来のリーダーになってほしい」と思いを語った。
 次に、シカゴ大学医学部血液腫瘍内科のケネス・コエン氏が「がん研究開発のための国際研修プログラムの実施」と題して、シカゴ大学の紹介や、シカゴ大学医学部での教育プログラムについて話した。
 会場には、がんの臨床研究に携わる医師や研究者、RFL関係者など約40人が集まった。

 

MOD奨励賞受賞の言葉「マイ・ドリーム」

乳がんの転移および治療抵抗性を研究し、
根治を望める治療につなげたい
聖路加国際病院乳腺外科 喜多 久美子

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 この度、このような素晴らしい賞を頂き、大変嬉しく光栄に感じております。
私はこれまで乳腺外科・消化器外科を中心に外科のトレーニングを積み、現在は乳腺専門医として臨床診療に携わっています。臨床医として13年目になりますが、日々の診療の中で疑問が生じたり、患者さんが抱える悩みを知ったりすることで、がん治療に対して様々な思いを持つようになりました。それらの解決につながる研究をしたいという思いが年々強くなり、5年前に横浜市立大学の大学院生としてがんの基礎研究、トランスレーショナル研究に携わる機会を得ました。研究の意義と楽しさに触れるとともに、さらに研究を深めたい、自ら研究を立案して進めていけるようになりたいという気持ちに駆られるようになり、研究留学を志願するに至りました。
 今回の受賞は、夢の第一歩として非常にありがたく感じています。この機会を最大限に生かして、がん研究の第一線で学び、帰国後はそれを出来る限り還元していきたいと思っています。また、リレー・フォー・ライフに代表されるようなサバイバーシップ活動についても本場の米国で体験し、日本でも継続していきたいと思っております。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

より安全で、より効果的な同種造血幹細胞移植治療を確立したい
大阪市立大学大学院医学研究科  西本光孝

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 このたびはこのようなすばらしい賞を受賞でき、大変うれしく思いますとともに、身の引き締まる思いであります。私は血液内科医として、特に、同種造血幹細胞移植治療に従事してきました。白血病をはじめとした血液悪性腫瘍の多くは進行が早く、また、化学療法に抵抗性であることもしばしばあります。そういった難治性の血液疾患に対して、根治を目指した治療法として同種造血幹細胞移植が行われていますが、治療による重篤な合併症によって、命を落としてしまう方が20-30%にものぼる非常にリスクの高い治療です。また、急性期の合併症をうまく乗り切っても、慢性の合併症によりQOLが著しく低下してしまったり、原病が再発してしまったりする患者さんも多く経験してきました。まだまだ発展途上の治療法と言わざるを得ないと思います。
 このたび、世界でも有数の移植施設であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンターで研修、研究する機会を与えていただきました。米国で多くを学び、より安全で、より効果的な同種造血幹細胞移植治療の確立のために貢献できるようにがんばっていきたいと思います。

進行肺がんの根治を目指し、より手厚いがん医療を提供したい
東北大学病院呼吸器内科 宮内栄作

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 この度はMOD奨励賞を受賞させていただくことになり、シカゴ大学医学部で学ぶ機会を得られたことを大変嬉しく思います。この奨励賞がリレー・フォー・ライフに関わるたくさんの方々の期待と支援の基に成り立っていることを改めて感じ、身が引き締まる思いです。
 私は呼吸器内科医で、特に肺がんの臨床研究・基礎研究をライフワークにしています。肺がんはあらゆるがん種の中で最も予後不良な疾患であり、とくに進行肺がん患者さんの予後は決して良いとは言えない現実があります。しかし、医学は目まぐるしく日々進歩しています。進行肺がんの患者さんでも根治を目指し、がんになっても不安を感じることなく生活ができるように支援していくことが私の夢です。
 そして肺がん診療に関わる仲間を増やし、より手厚いがん医療を患者さんに提供できるようにすることがもう一つの夢であります。皆様の支援でいただいた留学の機会を十分に生かし、米国での肺がんの基礎研究、橋渡し研究、臨床研究の現場を経験し、帰国後にあらゆる形で皆様に還元できればと考えております。皆様の期待に沿えるよう、米国で沢山のことを学び、経験をしてきたいと思います。