「強制隔離の島 長島を世界遺産に」より(2024年6月23日)
先日、わかばにてDVDを観る会があり、「映画あん」を観ることができた。主演樹木希林さんがハンセン病の元患者として登場し、今も残る差別、虐待について演じていた。この映画は数年前、「福山市人権資料館」でも私は観ていた。
ハンセン病といえば、映画では「砂の器」を観ている。文学では「北條民雄集」「私が捨てた女」などを読んでいる。また、静岡県御殿場市「神山復生病院」にて元ハンセン病患者さんと会い、話をさせてもらったことがある。
そんな私が、六月十五日、岡山芸術創造劇場ハレノワ中劇場で開催された「強制隔離の島 長島を世界遺産に」主催RSK山陽放送に参加してきた。
「えっ、もうこんなに並んでいるの」ハレノワに来るのは初めて。開場は十三時だが、十二時四十五分に到着。行列が長い。熱気を感じる。中ホールの客席総数は八百七席。パンフと小説「吐噶喇海峡」原憲一著をいただいて入場するとほとんどの席が埋まった。
十三時開演。それでは構成と気になった部分を記していきたい。今日は三部構成。
第一部 基調対談「『世界を駆ける』世界のハンセン病の現場から」日本財団 笹川陽平会長。
笹川会長の著書を基に対談。
今年二月、八十五歳でペースメーカーを使用しているが、アフリカのキリマンジャロに登山し、「ハンセン病を忘れないで」と訴える。ハンセン病は熱が出たり、痛くなったりしないので、病院に行かない。気が付いたら障害が重くなっている。患者を探しに行かなければならない病気だ。
最初に国連でハンセン病について訴えた。世界中には薬を飲んでいない人が多く、まずは薬の飲み方から教えなければいけなかった。
〇薬は無料。
〇病気は治る。
〇差別はいけない。
この三つのメッセージを訴えている。
文学、焼き物等芸術作品が残っているのは日本だけ。苦難に満ちた歴史だが、ぜひ世界遺産にしなければならない。ほかにはないから。
第二部 朗読 「命をつないだハンセン病療養者の文芸から」 俳優 竹下景子氏
「ハンセン病文学全集」から詩を朗読された。その中で印象的だったのは「自分が表には出られないから、作品が表に出てほしい」という中学生の表現。差別・偏見を表すと同時に、ハンセン病のことを正しく理解してほしいという思いが伝わる。
第三部 パネルディスカッション 「ハンセン病の療養所、世界遺産登録に向けて」
ハンセン病訴訟弁護団 徳田靖之氏
奄美大島・家族訴訟原告 奥 晴海氏
長島愛生園園長 山本典良氏
RSK山陽放送報道制作局長 山下晴海氏
司会 石田好伸アナウンサー
皆さんの共通する思いをまずは記す。
「負の歴史であるハンセン病問題をいかに残していくかが問われている。負の世界遺産といえば、世界にはアウシュビッツ、日本には広島原爆ドームがある。前者は近年ナチスの犯罪からドイツ人の責任とし、責任転嫁することなく自分事としてとらえて教訓を新たに得る。後者は当初より自分事として考え、過ちを繰り返させないではなく、過ちを繰り返しませんとし、世界平和を祈念している。
顧みて、偏見差別により人権が、侵害された残存する施設として、ハンセン病施設がある。これは世界遺産として残す価値がある」
ほかにも出た意見を記す。「家族の中にも施設のことを知らない人がいる。まずは知っていただくことが大切」
「コロナだが、二類から五類になった時、感染者の人権を守るためという議論が全くなかった。これでは過去の感染症問題が生かされていない」
「ハンセン病だが、最後の一人がいなくなるのはそう遠くない時期に現れる。その時誰が看取るのか.亡くなっても資料を大切にし、学ぶことはある」
「ハンセン病について読んで学ぶだけではなく、療養所を見学し、触れるものは触るなどして学ことが大切」
有意義なシンポジウムだった。RSK山陽放送では七月の日曜日に今回のシンポジウムを放送する予定があるといわれる。
「吐噶喇海峡」も読んでみたいと思っている。