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2025年08月29日

わかりやすい本だったな

わかりやすい本だったな(2025年8月29日)

 「目の見えない精神科医が、見えなくなって分かったこと」福場将太著 サンマーク出版  を読んで「本当にわかりやすくて読みやすい本だな」と思った。ただ、高齢者の私にとってそのような本は、忘れやすい本でもある。だけどこの本は違った。各章の最後のページにその章のまとめが載っている。これなら忘れそうになっても最後のページを読めば思い出す。

 ところでなぜ私がこの本を読もうと思ったのだろうか。私は左目が「中心静脈閉そく症」という病気になり、ほとんど視力はない。「血管に弱いところがあるからなったのだろう。右目を大切に」と眼科医は言う。そこで「もしかしたら右目も視力が落ちるかも」という思いがあるので読んでみようと思った。

 著者がまず言いたいこと。「視覚障がい者の世界は、意外にもカラフルです。真っ暗な世界なんてとんでもない!」視覚以外の感覚を総動員して、目の前の風景や出来ごとを自分で描いて生きているといわれる。だから目の見えない人を「視覚障がい者」というより、「視覚想像者」と呼んでほしいとのこと。

 そういえば、私は若いころ視覚障がい者の伴走ボランティアをしていた時期がある。ドレミファマラソン、京都てんとう虫マラソンなどでだが、皆さん元気がよく、イキイキと走られていた。真っ暗な世界なんてとんでもないと私も思う。

 また、私がアイマスクをかけ小学生と一緒に走った経験があるが、元気で走っていた。要は私たちが「ラジオを聴いているような世界」を想像してもらえばよいのでは。見えないから真っ暗な世界でくよくよということはないだろう。

 著者が「目の見えない精神科医」であることを開示したきっかけだが、次のように述べている。
先輩の眼科医に「講演会で話してくれないか」と誘われたこと。「眼科にはいずれ目が見えなくなるといわれた患者、失明して希望を失った患者さんがたくさんいる。だけど患者数が多く、とてもメンタルケアまで手が回らない。だから目が見えなくなり、精神科医でもある福場に話してほしい」

 その話を聞き「そうか、私にしかできない分野があるのだ」と思い、しっかり講演に取り組んだ。そして、「視覚障害を持つ医療従事者の会ゆいまーる」という団体を知ったことも大きい。「視覚障害を持つ医師は自分だけではない」これは大きい。いわゆるピアサポート活動になるのでは。

 私もスキルス胃がんの手術を受けた後、「五年生存率が低いのにどうやって過ごそうか」と悩んだ時期があるが、「生きがい療法」あるいは「希望の会」と知り合い、勇気づけられた。

 さて、現在の私の職業である「精神障がい者の支援」に関する部分を取り上げてみたい。著者は「積極的に曖昧に生きよう」と述べている。

 精神の病気は血圧のように数値にすることも、レントゲンで調べることもできない。「医者の心で患者の心を解釈するだけ」だから「自分の診断が絶対正しいとも、誤診だとも言えない」

 「患者さんの言っていることが絶対正しいとも信じない。嘘だとも信じない。今、最善と思うことを全力でやる」そうだよな。利用者によっては言うことが変わる人がいる。体調によって行動も変わる。「これが正解」と思うより、「今はこの方法がいいのでは」と、曖昧さを残している方が、双方が傷つく度合いが少なく、また新しいかかわり方を作られるのではと思う。

 「人の心は十人十色。だから精神科医でも絶対にこうすれば正解とは言えない」そうだよな。まして職業支援員は「こうするべき」ではなく「今はこれがいいのでは」と思って接することが大切。

 またSNSの情報を「それって見る必要がありますか?」と訊いている。「助けを求めるのなら、SNSよりも、身の回りの知人に求めて」という。全くそうだと思う。

 ずいぶん私より若い著者だが、学ぶことが多かった本である。