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プロジェクト未来の助成を受けた奥野友介先生から研究成果の続報届く!

新しい治療薬や新薬開発へ向けた研究に助成する「プロジェクト未来」で2015年度採択され助成を受けた名古屋大学の奥野友介先生から研究成果の続報が届きました!

まずは、全国のRFLをサポートしてくださっているリレーヤーの皆様へのメッセージです!

2016年2月RFLJ中日本ブロックサミットにて

◆RFLを支えてくださっているみなさまへ

プロジェクト未来でいただいた助成金は、この研究を進める上で大きく役立ちました。国からの研究費は、ある程度成果の上がっている研究に配分されることが多く、しかも研究費の申請から配分までかなりの時間がかかります。
プロジェクト未来の助成金は、はじめたばかりで、まだ成果といえるほどのものはなかったこの研究の立ち上げの段階で、大きく役立ったと思います。この研究は、論文発表があと1年遅れていたら世界中に先を越されて形(論文)にならなかった(=その後の研究の道も閉ざされた)わけですが、そういう意味で、いただいた助成金はかけがえのないものだったと思います。
これからも、芽生えの段階にある研究や、治療法の開発につながる大事な研究をサポートしてください。

◆研究のその後と決意

2015年に見つけて、2016年に論文発表した、小児急性リンパ性白血病(ALL)に見つかるMEF2D融合遺伝子の続報です。

どうやら私たちが見つけたものは間違いではなかったようで、2016年には世界中の研究グループから、同じ発見の報告がなされました。中国のいくつかの小児病院と共同研究をしていますが、中国は人口が多いので、その分MEF2D融合遺伝子を持つALLの患者も多いようです。そしてやはり予後は悪いようで、どの治療法も効果がない、と嘆いていました。名大病院では、ALLの患者さん全員について網羅的遺伝子解析(病院の検査で調べられる遺伝子だけでなく、ヒトの遺伝子全てを調べる)を行っていますが、やはりMEF2D融合遺伝子を持っているALLが見つかります。2016年の論文では、これまで20年以上貯めてきた患者さんの検体から4人見つけたわけですが、それに加えて現在までに4人が見つかっています。日本でもなかなかの頻度で患者さんがいると考えられます。

 治療法開発については、残念ながら新しい薬を使って治療法開発を進めるパートナー企業は見つかりませんでした。が、私たちが見つけている、このタイプの白血病に効きそうな抗がん剤の組み合わせを、実際に患者さんに投与する臨床研究を進めています。患者さんの数が非常に限られていること(日本で年間15~25人)と、ALLが治ったと自信を持って言えるのが治療を終了して2年後であることから、結果が出るまでにはまだかなりの時間がかかります。

 これとは別に、違うアプローチで治療法の開発を進めています。私たちは、MEF2D融合遺伝子をもつALLは、ALLの治療で一番大事な抗がん剤(ステロイド剤)が効かなくなることを発見しています。おそらく、これがこの白血病が治らない最大の理由だと考えられます。ステロイド剤が効かなくなる仕組みとして、ステロイド剤が持つ、細胞を死なせる信号を受け取る仕組みが、がん細胞で壊れている、ということがあります。MEF2D融合遺伝子をもつALLで、ステロイド剤の信号を受け取る仕組みのどこが壊れているのかを明らかにして、あわよくばステロイド剤が効くようになる別の薬を見つけることができれば、という研究を進めています。ただこれはなかなか大変な作業で、ヒトの2万種類ある遺伝子の全てについて、その機能をなくしてみたり、高めてみたりする必要があります。その結果、なかなか大規模な実験が必要になるのですが、いったんその仕組みが分かってしまえば、MEF2D融合遺伝子をもつALLだけでなく、他のステロイド剤が効かない白血病にも役立つ可能性がある研究ですので、なんとか研究を遂行できればと思っています。

 小児のALLは、全体としては、85%くらいは治る病気です。しかしながら、残りの15%の中に、MEF2D融合遺伝子を含めた、現在の治療では治らない、厄介な白血病が含まれています。こういったものが潜んでいることを明らかにしたのは1つ目の重要なステップですが、それが治るところまで研究を進めて初めて、見つけてよかった、となるわけです。現在進めている治療法開発のアプローチで、なんとか治るところまでこぎ着けてやろうと思っています。(名古屋大学 先端医療・臨床研究支援センター 奥野友介)

研究チームのみなさんです(前から2列目中央が奥野先生)

◆参考資料:2016年に報告された内容
名古屋大学から発信されたプレスリリース
Journal of Clinical Oncologyに掲載された論文