2008年10月08日(水)
「歩く」以外のさまざまなイベントも行われます。
会場内の会議室では「いのちの大切さを伝えたい」と始まった絵本の読み聞かせが行われました。追悼、励まし、自身の気持ちの整理・・・そんな想いがあふれ、聞いているとこころが震えます。
文/編集部 峙 由紀子
2008年9月13?14日 兵庫県芦屋市総合公園で行われた、がん患者のためのイベント「リレー・フォー・ライフ」に参加してきました。
「歩くの?」
「そう、同じ場所をグルグル。ただ24時間歩き続けるの。」
「???・・・で?」
このイベントの趣旨を聞いて、誰もが抱く疑問です。
歩くことで、なにがどうなるのか・・・?
日本人の、男性は2人に1人、女性は3人に1人。
至る所で目にする「がんの罹患率」です。
それでも「私は関係ない」「私は大丈夫」と思えてしまうのはなぜでしょう?
では、まず想像してみてください。
あなたの親が、兄弟が、妻が、夫が、友人が、恋人が、同僚が、ある日、「わたしはがんになりました」と告白してきたら、どう答えますか?なにか変わりますか?
人は病気になると様々な問題を抱えます。
人間関係、病院選び、治療方法の選択、副作用、後遺症、お金、そして心の問題・・・。「がん=死」は一昔前の考え方です。退院して、再発を意識しながらも“普通”の生活に戻ります。通院や投薬で治療は続いているかもしれません。でも、周囲にその事実を伝えられずに、あなたのすぐ隣で“普通”を装っているかもしれません。
リレー・フォー・ライフ当日の芦屋は30℃を越す晴天。早朝、雨が降ったものの、秋晴れとは言い難い強い日差しが降り注ぎます。会場ではサバイバー(がんを体験している人)は紫色のバンダナを身に付け、自身がサバイバーであることを告げます。みなさんの笑顔が本当に力強くて、まぶしい。「リレー・フォー・ライフに参加することを目標に治療を頑張った。」そんな声も聞かれます。
昨年のリレー・フォー・ライフに参加した直後、
自己診断で乳がんを発見したアグネス・チャンさんも会場を訪れ、
サバイバー・フラッグに手形を残した。
リレー・フォー・ライフは原則チームで参加します。でも、芦屋の会場にはひとりで来ても大丈夫なように「交流カフェ」が今年から新設されました。私が訪ねると、昨年このリレー・エッセーに参加して下さった竹内さんと今仁さんが迎えてくれました。交流カフェにはボランティア・スタッフのプロフィールがあり、希望すれば同じ病を持つ人や、似たような境遇の人と話をすることもできます。
交流カフェで誰でも見られるプロフィール。サバイバーや患者の家族など、境遇は様々。
交流カフェのテント。
受付でチームに属していないことを告げると、まずここに通される。
交流テントでは、がんの部位によってリボンが渡される。
会場で知り合った症例の少ない部位の患者同士で
「来年は“その他”ではないリボンを作ろう」と一致団結していた。
「誰も、誰かの代わりになることはできないし、100%理解することもできないけどね。でも話を聞いているうちに“ひとりじゃない”って気づく。そうすると自分の話もできるようになる。泣くこともできなかった人がたくさん泣いて、少し前向きになれる。時間は24時間もありますからね。」とボランティアの一人がおっしゃっていました。
歩く。
話す。
休憩する。
どんな過ごし方をしても自由です。
屋台のスジ煮込みは最高だったし、ステージでは音楽やサバイバーが体験談を語る「サバイバー・トーク」などのイベントが続きます。夜になればシェードにメッセージが書き込まれたキャンドルが灯り、市民ランナーもタスキをつなぎます。会場でずっと過ごす人も、一旦帰って戻ってくる人も、一日だけ参加の人も・・・それぞれです。
翌日は十五夜というこの日。
キャンドルが灯されルミナリエが始まっても会場の熱は収まりませんでした。
翌日、24時間つながれたタスキは、今年も実行委員長を務める大隅さんに手渡されました。大隅さんはこのリレー・コラムを始めるきっかけになった方です。真っ赤に日焼けして、人なつっこい笑顔で熱い抱擁を交わしゴールを祝福していました。
最後のタスキが大隅さんに手渡される。感動の抱擁!
“普通”の毎日が“普通”に続いていくことがどんなに素晴らしいことか・・・。
私たち、多くの“普通の人”はそんなことを意識せず暮らしているから、「私は大丈夫」と言えてしまうのかもしれません。
365日24時間がんと闘う日本人が、男性は2人に1人、女性は3人に1人。
あ、でも・・・“歩く、そしてチャリティ”がリレー・フォー・ライフの基本です。
参加費用や屋台の売り上げの一部が寄付金として患者支援やがん専門医の育成などに使われています。
詳しくは「RFL(リレー・フォー・ライフ)」で検索してみてください。2年前からたった1か所から始まった動きは、いま日本中に広がっています。規模は大小様々ですが、みなさんの近くでも開催されています。是非、ちょっとのぞいてみてください。