RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞(2012年度)

三重の塩崎さんと東京の並川さん 東京アメリカンセンターで授賞式


米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターへの研修が決まった塩崎隆也さん(右から3人目)と並川健二郎さん(同2人目)。上野直人・同センター教授(右端)と箱島・日本対がん協理事長(左端)増田紘子医師(左から3人目),ジョイ・サクライさん(同2人目)から激励を受けた=東京都港区の駐日アメリカ大使館東京アメリカンセンター

日本対がん協会が米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの協力を得て実施している「RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞」の2012年度の受賞者の発表と授賞式が4月19日、東京都港区赤坂の駐日アメリカ大使館・東京アメリカンセンターで開かれた。日本の若手医師が同センターで1年間、研修を受けるプログラムで、3回の2012年度は、三重大学の塩崎隆也医師(39)=産婦人科、現紀南病院=と、国立がん研究センター中央病院の並川健二郎医師(36)=皮膚科=が受賞した。

この奨励賞は、対がん協会が各地の実行委員会と一緒に開催しているリレー・フォー・ライフに寄せられた寄付金をもとに、地域のがん医療の充実を図るために2010年度に設けられた。一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクトが支援。発表・授賞式は駐日アメリカ大使館の協力を得て実施された。

対がん協会の箱島信一理事長が2人の受賞者を発表。MDアンダーソンがんセンター、並びに駐日米国大使館・東京アメリカンセンターの多大なサポートにお礼を伝えた。駐日アメリカ大使館広報・文化交流部のジョイ・サクライ一等書記官の祝辞に続いて上野直人MDアンダーソンがんセンター教授が奨励賞を授与。塩崎医師、並川医師が抱負を語った。

塩崎医師は「もう、早く帰って来て、と言われている」とユーモアを交えながら、1年間の研修への期待を話した。並川医師は「日本では相対的に少ない皮膚がんの分野から選んでくれたことに感謝します」などと述べた。

リレー・フォー・ライフに携わるサバイバーの坂下千瑞子さんが、自身のため、日本のがん患者のために充実した研修を送ってほしい、と2人への期待の言葉を述べた。

これまで2回の発表・授賞式に出席していたMDアンダーソンがんセンターのオリバー・ボーグラー教授はビデオメッセージで祝福した。ボーグラー教授は来日を望んでいたが、自身に発症した乳がん治療のためにかなわなかった。

今回の発表・授賞式では第1回目の受賞者の増田紘子医師(大阪医療センター)が、MDアンダーソンがんセンターで1年半にわたって研修を受けた体験を「MDアンダーソンがんセンターでのフェローシップ~Dream Come True~なぜ臨床研究研修は重要なのか?」と題して報告。炎症性乳がんの治療などの研究に携わり、米臨床がん学会(ASCO)で発表したことに加えて、厳しい研修の中でも、患者・家族とのイベントに参加するなど米ヒューストンでの生活を楽しく語った。

さらに上野教授と増田医師が、米国で研修を行うことの意義をテーマにディスカッション。アジアの国々からの留学生と一緒に研修した体験を増田医師が話す一方で、上野教授は、米国に留学する日本人医師が減っている現状について、日本の医療技術のレベルの高いことを背景に「もう米国に学ぶことがない、と考えている人が多いのかも知れない」と話した。臨床研究を行うシステム、「その患者」にとって最適な治療法を様々な立場の人たちが意見を交わして選ぶ仕組みなど、組織や社会の中で組み上げられてきたシステムを、その組織・社会のあり方とともに学びとることの大切さを指摘。「基礎ではなく、臨床でのことを研修するこのプログラムがユニークな存在として発展していくと日本の医療の変化につながる」と期待を語った。

ディスカッションを聞いた参加者は「寄付がどのように活用されているのか、その一つがよくわかった。リレー・フォー・ライフの大きな意義だ」などと話していた。参加者の要望もあり、この授賞式の模様をDVD化して関係者に配布する予定。

■マイ・オンコロジー・ドリーム(MOD)奨励賞について■
RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞は、日本の地域がん医療の拡充を図ろうと、日本対がん協会が米国屈指のがん専門病院として知られるテキサス大MDアンダーソンがんセンター側と協議して2010年に設けた研修プログラム(2人)。リレー・フォー・ライフに寄せられる寄付をもとに運営している。がん医療を志す医師免許取得後7年以上の若手・中堅医師が対象。副賞の奨学金は1人200万円。2013年度については近く公募する予定。問い合わせは日本対がん協会・米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター研修係(03-3541-4771)へ。

◆◇参考記事◆◇
第3回(2012年)マイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞
http://www.oncology-dreamteam.org/blog/2013/04/post-38.html
マイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞・関係記事
http://www.oncology-dreamteam.org/blog/cat66/

(記事、写真:マイ・オンコロジー・ドリーム事務局)

RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞 とは?

日本のがん医療に役立てることを目的に、米国屈指のがん専門病院として知られる米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターと協議して設けた研修プログラムです。日本の若手医師を同センターに派遣し、約1年間学んでもらいます。リレー・フォー・ライフ・ジャパンに寄せられた寄付金をもとに運営し、そこに、日本のがん医療向上を願う多くの方々の気持ちが込められています。

この趣旨を同センターにご理解いただくとともに、一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクトの協力を得て、2010年度に第1回目の公募を始めました。それ以来の受賞者は次の通りです。

[敬称略、五十音順、所属は採択時のもの]

年 度 氏名・所属
2017年 菊池弥寿子(乳腺内分泌外科、東京大学医学部付属病院)
隈部篤寛(医学部放射線科学、慶應義塾大学)
服部正也(乳腺科、愛知県がんセンター中央病院)
2016年 喜多久美子(乳腺外科、聖路加国際病院)
西本光孝(医学研究科、大阪市立大学大学院)
宮内栄作(呼吸器内科、東北大学病院)
2015年 岩瀬俊明(臓器制御外科、千葉大学附属病院)
及川将弘(乳腺外科、にゅうわ会及川病院)
鳩貝健(消化管内科、国立がん研究センター東病院)
2014年 三浦裕司(臨床腫瘍科、虎の門病院)
森川直人
(呼吸器・アレルギー・膠原病内科、岩手医科大学)
2013年 河野美保(腫瘍内科、広島市民病院)
原野謙一(腫瘍内科、日本医大武蔵小杉病院)
2012年 塩崎隆也(産婦人科、三重大学、現在紀南病院)
並川健二郎(皮膚科、国立がん研究センター中央病院)
2011年 古川孝広(腫瘍内科、KKR札幌医療センター 斗南病院)
原尾美智子(乳腺外科、栃木県立がんセンター)
2010年 増田紘子医師(乳腺外科、大阪医療センター)