RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞(2014年度)

三浦裕司医師と、森川直人医師が「RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞」を受賞(2014年度)


左より 秋山理事長、三浦医師、森川医師、垣添会長、上野直人教授

虎の門病院臨床腫瘍科 三浦裕司医師

私は、これまでに血液腫瘍、固形腫瘍と幅広いがん種に対応する、一般腫瘍内科医としての研修、経験を積んで参りましたが、5年程前に自身のライフワークを泌尿器腫瘍、特に腎がんと決め、現在、その治療、研究に力を入れております。現在、腎がんに対する非常に多くの抗がん剤が開発、承認されておりますが、日本には泌尿器腫瘍を専門とした腫瘍内科医がほとんどおりません。そのため、私は多くの泌尿器科医や泌尿器以外の腫瘍を専門とする腫瘍内科医から、様々な事を学びつつも、基本的には独学でこれまで学んで参りました。しかし、これから将来における私自身の成長、日本の患者さん達への貢献、将来この分野に進みたいと考える腫瘍内科医の教育などを考えるにあたり、今のままでは限界があり、海外に出て泌尿器腫瘍内科医のメンターのもとで学ぶ必要があると考え、今回、マイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞に応募致しました。
私のVisionは、「腎がんに関わるあらゆる苦悩から人々を解放する事」です。このVisionを達成するために、私は2つの事が必要だと考えております。それは、「より良い治療法の開発」と、「患者さんのより良い生活へのサポート」です。まず、治療については、innovative(革新的)な薬剤の研究、開発が必要だと考えます。近年、我が国でも、新薬早期臨床開発が行えるように、様々な試みがされておりますが、残念ながら泌尿器腫瘍の領域ではまだ進んでいないのが現状です。私は、帰国後この分野の進歩に従事できるように、MDアンダーソンがんセンターで、新薬開発に必要なtranslational research(橋渡し研究)の知識、新薬早期臨床試験の立案などについて学びたいと考えております。次に、患者さんの生活に対するサポートについてです。多くの薬剤の開発により、腎がんの生存期間は大きく延長しましたが、その長い期間における患者さんの身体的、精神的、社会的などあらゆる面における人生のサポート体制が整っているとは言いがたいと思います。今回の研修で、MDアンダーソンがんセンターでの多職種によるチーム医療の取り組み、また、患者さん自身や社会の取り組みについても学んできたいと思います。


岩手医科大学呼吸器・アレルギー・膠原病内科 森川直人医師

この度は、リレー・フォー・ライフ マイオンコロジードリーム奨励賞を頂き、本当にありがとうございます。ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)で例年、多くの魅力的な発表をしている、あこがれのMDアンダーソンがんセンターで学ぶ機会を得ることができた喜びは、なんと表現して良いかわかりません。また、「リレーフォーライフ」によせられた、患者さん、ご家族、がん診療に期待する多くの方々からのご寄付をもとにした、この奨励賞をいただいたことは、がんに取り組む医師の一人として本当に光栄に思うとともに、身の引き締まる思いでもあります。
私は東京都日野市の出身で静岡の浜松医大を卒業後、長く宮城県で働いておりました。最初は呼吸器内科医として、後半は肺癌を専門とする腫瘍内科医として、市中病院での診療に力の多くを注いできました。2年前より岩手医科大学に異動し、後進の指導や研究、地域の先生からのコンサルテーションに取り組んでおります。
東北は豊かな自然と心の温かい人々が沢山いる素晴らしいところですが、一方で深刻な医師不足が続いている地域です。4年前におきた東日本大震災は岩手、宮城、福島に深い傷跡を残し、沿岸部を中心に医師不足にも追い打ちをかけています。とりわけ、がん化学療法を専門とする医師の不足は顕著で、東京に162名いるがん薬物療法専門医は岩手には6名しかいません。
NHK連続テレビ小説「あまちゃん」の舞台になった久慈市とその周辺には常勤の呼吸器科医・腫瘍内科医がおらず、肺癌の患者さんは往復4時間かけて八戸に行くか、5時間かけて盛岡に行かないと専門的な治療を受けられません。岩手の多くの地域では、患者さんたちが長時間の移動に耐えて治療を行っております。また、地域の病院でも一般呼吸器科医や外科医の努力で何とかがん診療が維持されている状況です。
このような環境のなかで、私は質の良いCommunity Opinion Leader(地域医療の推進者)となることを目指してきました。自らが多くの患者さんを診療し、若い先生を指導し、がん診療の魅力を語り、地域の医師から信頼・相談され、彼らと協力しながら小規模でもユニークなコンセプトの臨床試験を行って全世界に発信したいと願っています。そして東北でがん診療に取り組む医師を増やして、一人でも多くの患者さんに標準治療が届けられるよう益々取り組んで行きたいと思います。
今回の留学研修期間中に得たMDアンダーソンでの経験を、残さず持ち帰って、東北の医師、メディカルスタッフ、そして患者さんたちと共有できるよう、精一杯努力したいと思います。
リレー・フォー・ライフにご協力いただいた皆様、対がん協会の皆様、上野先生、Dr.BoglerをはじめとするMDアンダーソンがんセンターの先生方に心より感謝いたします。

RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞 とは?

日本のがん医療に役立てることを目的に、米国屈指のがん専門病院として知られる米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターと協議して設けた研修プログラムです。日本の若手医師を同センターに派遣し、約1年間学んでもらいます。リレー・フォー・ライフ・ジャパンに寄せられた寄付金をもとに運営し、そこに、日本のがん医療向上を願う多くの方々の気持ちが込められています。

この趣旨を同センターにご理解いただくとともに、一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクトの協力を得て、2010年度に第1回目の公募を始めました。それ以来の受賞者は次の通りです。

[敬称略、五十音順、所属は採択時のもの]

年 度 氏名・所属
2017年 菊池弥寿子(乳腺内分泌外科、東京大学医学部付属病院)
隈部篤寛(医学部放射線科学、慶應義塾大学)
服部正也(乳腺科、愛知県がんセンター中央病院)
2016年 喜多久美子(乳腺外科、聖路加国際病院)
西本光孝(医学研究科、大阪市立大学大学院)
宮内栄作(呼吸器内科、東北大学病院)
2015年 岩瀬俊明(臓器制御外科、千葉大学附属病院)
及川将弘(乳腺外科、にゅうわ会及川病院)
鳩貝健(消化管内科、国立がん研究センター東病院)
2014年 三浦裕司(臨床腫瘍科、虎の門病院)
森川直人
(呼吸器・アレルギー・膠原病内科、岩手医科大学)
2013年 河野美保(腫瘍内科、広島市民病院)
原野謙一(腫瘍内科、日本医大武蔵小杉病院)
2012年 塩崎隆也(産婦人科、三重大学、現在紀南病院)
並川健二郎(皮膚科、国立がん研究センター中央病院)
2011年 古川孝広(腫瘍内科、KKR札幌医療センター 斗南病院)
原尾美智子(乳腺外科、栃木県立がんセンター)
2010年 増田紘子医師(乳腺外科、大阪医療センター)