2022年度RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞
柴田祐司氏、宮川哲平氏に決定
日本対がん協会は5月26日、「リレー・フォー・ライフ(RFL)マイ・オンコロジー・ドリーム(MOD)奨励賞」の2022年度の受賞者を発表した(協力:米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター、シカゴ大学、一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクト)。
同賞は日本対がん協会が各地の実行委員会と共に開催しているリレー・フォー・ライフ・ジャパンに寄せられた寄付金をもとに、地域のがん医療の充実を図るために2010年度に設けられた米国における1年間の留学研修プログラム。全米有数のがん専門病院であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンターとシカゴ大学の協力と、一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクトの支援の元にこれまで19人の若手医師を米国に送りだしてきた。
今年度の受賞者は国立がん研究センター東病院呼吸器内科の柴田祐司医師と、福島県立医科大学低侵襲腫瘍制御学講座の宮川哲平医師の2人。2人はMDアンダーソンがんセンターで、それぞれ1年間研修する。シカゴ大学医学部への留学は、今回は該当者がなかった。
新型コロナウイルスの影響により2年の間プログラムを休止したため、久しぶりの受賞者となる。
国立がん研究センター東病院呼吸器内科 柴田祐司氏
この度は、RELAY FOR LIFE My Oncology Dream奨励賞にお選びいただき、深く感謝申し上げます。このような栄誉ある賞をいただき、本当に嬉しく思うとともに、身の引き締まる思いです。
私は、これまで横浜市立大学附属病院、神奈川県立がんセンターや国立がん研究センター東病院で、多くの先輩医師とともに議論し大規模比較試験のエビデンスと診療経験を自身の進行期の肺癌患者さんの治療に有機的に結びつける大切さを学びました。また、これらの病院で多数の臨床研究を計画・実施することにより、肺癌の新規治療の開発および治療標的の探索に努めてきました。
近年の肺癌治療においては、遺伝子解析技術の進歩により、個々のがんゲノムを解析し、その結果に基づいて有効な治療を選択する、がん個別化医療が飛躍的に発展しています。現状の肺癌治療の課題を見極め、更に発展させるためには、臨床研究のみでなく、がんの発生・増殖や薬剤の作用・抵抗性のメカニズムを明らかにするための基礎研究や、臨床研究につなげるためのTranslational researchが重要です。
私が2023年4月より留学しているMD Anderson Cancer Centerは米国でも有数のアカデミアであり、米国を代表する研究者であるJohn Heymach教授のもとで、基礎研究だけでなく、米国内の他機関、他国のアカデミアならびにグローバル企業との共同研究などのノウハウを学び、将来日本の肺がん治療開発を牽引していきたいと考えております。
今回の留学が、RELAY FOR LIFEや日本対がん協会の皆様にご支援頂いていることを忘れることなく、皆様のご期待に応えられるよう、ヒューストンの地で研鑽を積みたいと考えております。
福島県立医科大学低侵襲腫瘍制御学講座 宮川哲平氏
このたびは、RFL・マイ・オンコロジー・ドリーム(MOL)奨励賞にお選びいただき、MDアンダーソンがんセンターで学ぶ機会をいただき、誠にありがとうございます。大変嬉しく、光栄に思うのと同時に、この賞がRFLに関わる多くの皆様の支援と期待の上に成り立つものであることを感じ、身の引き締まる思いです。
私は消化器外科医として、大腸癌を専門とし福島県の市中病院で手術に明け暮れる毎日を過ごしています。これまで大腸癌のなかでも特に、直腸癌の集学的治療に興味を持ち、臨床および研究活動を行ってきました。直腸癌に対する治療は日本と欧米では大きく異なります。日本では依然として手術が治療の中心です。一方欧米では手術に加え、薬物療法や放射線治療が標準的に行われ、集学的治療の成績向上により近年では手術をしないで経過をみるWatch and Wait療法なども世界的に注目を浴びています。
われわれ消化器外科医も今後は手術だけでなく、集学的治療にも精通し、患者さん一人ひとりにとっての最適な治療を考えることが求められます。
今回、米国を代表する大腸外科医であるGeorge J. Chang先生のもとで研修させていただくことになりました。日本と米国の直腸癌に対する治療戦略の違いを実際に経験し、将来的に双方の優れた点を組み合わせた直腸癌に対するより適切な治療戦略を構築することが、いまの私の夢です。
最後になりますが、このような素晴らしい機会を与えてくださった皆様のご期待に沿えるように精一杯頑張ってきたいと思います。