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2019年度RFLマイ・オンコロジー・ドリーム
奨励賞宇田川響氏、瀬戸克年氏に決定

左より、宇田川氏、瀬戸氏

日本対がん協会は2月24日、東京都中央区の国立がん研究センター大会議室で「リレー・フォー・ライフ(RFL)マイ・オンコロジー・ドリーム(MOD)奨励賞」の2019年度授賞式を開催した(協力:米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター、シカゴ大学、一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクト)。

同賞は日本対がん協会が各地の実行委員会と共に開催しているリレー・フォー・ライフ・ジャパンに寄せられた寄付金をもとに、地域のがん医療の充実を図るために2010年度に設けられた米国における1年間の留学研修プログラム。全米有数のがん専門病院であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンターとシカゴ大学の協力と、一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクトの支援の元にこれまで18人の若手医師を米国に送りだしてきた。

今年度の受賞者は国立がん研究センター東病院呼吸器内科の宇田川響医師(36)と、東京医科歯科大学大学院呼吸器外科学の瀬戸克年医師(35)2人。2人はMDアンダーソンがんセンターで、それぞれ1年間研修する。シカゴ大学医学部への留学は、今回は該当者がなかった。

日本対がん協会とリレー・フォー・ライフ・ジャパン実行委員から奨学金認定書が2人に授与され、受賞者がそれぞれ喜びの言葉を述べた。

左より、後藤尚雄日本対がん協会理事長、金子芳洋RFLJ室蘭実行委員、MDアンダーソンがんセンター上野直人氏、宇田川氏、瀬戸氏、2011年度MOD奨励賞受賞者古川孝広氏、2010年度MOD奨励賞受賞者増田紘子氏、垣添忠生日本対がん協会会長

MOD奨励賞受賞の言葉「マイ・ドリーム」

Physician-scientistを目指して
国立がん研究センター東病院呼吸器内科 宇田川響医師

 このたびは、栄えあるリレー・フォー・ライフ(RFL)マイ・オンコロジー・ドリーム(MOD)奨励賞にお選びいただき、誠にありがとうございます。このような光栄な賞をいただき、本当に嬉しく思っております。

 私は、2013年4月から国立がん研究センター東病院の呼吸器内科レジデント、2016年4月から同院の呼吸器内科医員として、多くの進行期の肺癌患者さんの治療に従事しながら、多数の臨床研究を計画・実施することにより、肺癌の新規治療の開発および治療標的の探索に努めてきました。さらに、2018年5月からは、国立がん研究センター先端医療開発センター・ゲノムTR分野で、前臨床研究や橋渡し研究も経験しました。

 近年の肺癌治療においては、EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子を初めとした様々なドライバー遺伝子異常が同定され、これらに対する分子標的薬が開発されており、個別化医療が飛躍的に発展しています。このような分子標的治療の開発においては、がんの発生・増殖のメカニズムや薬剤の作用機序を理解していることが非常に重要であり、臨床研究のみでなく、基礎研究や前臨床研究・橋渡し研究の知識と経験が必要不可欠です。そのため、臨床研究や基礎研究、前臨床研究・橋渡し研究を組み合わせて、新規の治療開発を進めることができる人材(physician-scientist)が求められています。

 米国を代表するphysician-scientistの一人である、MDアンダーソンがんセンターのJohn Heymach教授のもとで臨床試験のみならず基礎研究、前臨床研究、橋渡し研究を行い、それらを通じて米国における新規治療開発を実際に経験することにより、physician-scientistとして大きく成長したいと思っています。

 RFLや日本対がん協会の皆様のご期待に応えられるように研鑽を積み、帰国後は日本のがん診療を牽引していきたいと考えています。最後になりますが、皆様のご支援に、心より感謝申し上げます。

治療薬開発の研究手法学び臨床外科に
東京医科歯科大学大学院呼吸器外科学 瀬戸克年

 この度は私をRFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞に選んでいただき、深く感謝申し上げます。私のような臨床医、かつ駆け出しの研究者をこの素晴らしい賞に選んでくださり嬉しく思うとともに、この賞の重さに身の引き締まる思いです。

 私は呼吸器外科医として、肺癌を主とした胸部悪性腫瘍の外科的治療に携わってまいりました。近年の肺癌の薬物治療の進歩は目を見張るものがあり、それにより外科的治療も手術単独でなく、薬物治療や放射線治療を組み合わせて行われる集学的治療の一つとなる機会が増えていくことが予想されます。そこでわれわれ呼吸器外科医も手術だけではなく、薬物治療、そして薬物治療の根拠となる遺伝子変異や腫瘍免疫などについて深く知ることが求められる時代になってきています。

 今回研修させていただくMDアンダーソンがんセンターは、世界中から優秀な人材が多く集まり、最先端の設備で研究が行われています。私は外科医ではありますが、そのような環境に身を置いて、最先端の研究に触れ、さらなる肺癌治療薬の開発や、バイオマーカーに関する研究に携われればと考えております。そして充実した環境で研究手法と考え方をできるだけ習得し、帰国後には自分の研究を継続しながら、臨床医として再び肺癌治療に携わり、機会があれば後進の育成にも関与していきたいと思います。

 最後になりますが今回の受賞には私の所属である東京医科歯科大学呼吸器外科、私が現在勤務している愛知県がんセンター遺伝子病理診断部の協力が必要不可欠でした。多くの先生、先輩方に感謝するとともに、RFLに関わる皆様にいただいている期待を裏切らぬよう、努力して参りたいと存じます。