RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞(2023年度)

2023年度RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞
西井和也氏、松井悠氏に決定

日本対がん協会は3月21日、「リレー・フォー・ライフ(RFL)マイ・オンコロジー・ドリーム(MOD)奨励賞」の2023年度の受賞者を発表した(協力:米テキサス大学MDアンダーソンがんセンター、シカゴ大学)。

同賞は日本対がん協会が各地の実行委員会と共に開催しているリレー・フォー・ライフ・ジャパンに寄せられた寄付金をもとに、地域のがん医療の充実を図るために2010年度に設けられた米国における1年間の留学研修プログラム。全米有数のがん専門病院であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンターとシカゴ大学の協力と、一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクトの支援の元にこれまで21人の若手医師を米国に送りだしてきた。

今年度の受賞者は独立行政法人国立病院機構岩国医療センター呼吸器内科の西井和也医師と、国立大学法人富山大学皮膚科の松井悠医師の2人。西井医師はMDアンダーソンがんセンターで、松井医師はシカゴ大学医学部でそれぞれ1年間研修する。

シカゴ大学での研修はコロナ禍を経て、2018年度以来5年ぶりとなる。

 

独立行政法人国立病院機構岩国医療センター呼吸器内科 西井和也氏

この度は、RELAY FOR LIFE My Oncology Dream奨励賞にお選びいただき誠にありがとうございます。本奨励賞の支援者の皆様に心より御礼申し上げます。

私はこれまで呼吸器内科医として肺がん患者さんの診療に携わる傍ら、肺がんの基礎研究・臨床研究にも取り組んできました。

肺がんの化学療法は近年目覚ましい発展を遂げていますが、未だ薬物治療のみで肺がんを治癒することは難しく、一緒に治療に取り組んできた患者さんに抗癌剤が効かなくなることは本当につらく、がん診療に関わり始めたころの私は自分の力不足に深く落ち込んでいました。そんなころにある患者さんが私に「いつかは肺がんを治せるように頑張ってください」と声をかけて下さいました。その日から私はがん患者さんが自分のことだけではなくがん治療の発展を願い、その思いを私に託して下さっていることを知り、日々の診療だけではなくがん診療の発展に取り組むことが私のライフワークなのだとの思いに至りました。

それから幾年が経ち、私は大学院で、免疫チェックポイント阻害薬が効きにくいEGFR遺伝子変異陽性肺がんについての研究を行い、EGFR遺伝子変異陽性肺がんに分子標的治療薬を投与することで、免疫チェックポイント阻害薬の効果が変化することを報告しました。この知見を臨床に応用するためにはまだ多くの研究が必要ですが、この度、貴奨励賞に選んでいただいたことで、肺がんの分子標的治療・免疫療法の先駆的な研究をされているMDアンダーソンがんセンターのJohn Heymach教授のもとで研究させていただく道が開けました。

がんを薬で治すという私と患者さんの夢を実現できるよう、この大変貴重な機会を生かして精一杯頑張ってまいりますので、引き続きご支援の程何卒宜しくお願い致します。

 
 

国立大学法人富山大学附属病院皮膚科 松井悠氏

RELAY FOR LIFE My Oncology Dream奨励賞に選出頂き、誠にありがとうございます。
私のような者を選んで頂いた意味を理解し、賞設立の経緯、原資を踏まえた上で今回の経験を経て私が地域社会に還元できる自分の役割を考えたいと思います。

私は日頃、富山大学附属病院で皮膚科医として診療に従事しております。これまでの経歴において富山大学麻酔科では周術期からがんに伴う終末期に至るまでの安全かつ適切な全身管理、新潟県立がんセンター新潟病院では皮膚がんに対する手術および薬物による集学的治療と臨床研究の重要性を学び、富山大学分子神経科学講座ではがん抑制遺伝子に関する基礎研究の機会を与えて頂き、研鑽に励んで参りました。
シカゴ大学ではOlopade教授の下、基礎研究から実臨床への橋渡し研究や個々の疾病に対する最適治療の探索を意味するプレシジョンメディシンを学びます。

“私はこの地で生まれ育ちました。家族もここにいます。病に伏してもできる限りはここで闘病したいです。” 新潟県立がんセンター新潟病院に勤務している際に受け持った患者さんから言われた言葉です。
高齢化が進む日本社会において、過疎地域に至るまでの完全な先進医療の拡充が困難であることは事実ですが、地方から見える医療の景色はそこに住む者にしか分かりません。
揺れ動く医療情勢のなかで、私一人に出来ることには限りはありますが、地域でがん治療を受けられる方々と我々医師が同じ方向を目指してともに歩いてゆける未来に微力ながらもお力添えができるよう、精進して参りたいと思います。
富山という地方の小さな街しか知らずに育った私に、医療を通じて世界を見て、知る機会を与えて下さった皆様に重ねて心より御礼申し上げます。
精一杯頑張ります。

 

RFLマイ・オンコロジー・ドリーム奨励賞 とは?

日本のがん医療に役立てることを目的に、米国屈指のがん専門病院として知られる米テキサス大学MDアンダーソンがんセンターと協議して設けた研修プログラムです。日本の若手医師を同センターに派遣し、約1年間学んでもらいます。リレー・フォー・ライフ・ジャパンに寄せられた寄付金をもとに運営し、そこに、日本のがん医療向上を願う多くの方々の気持ちが込められています。
この趣旨を同センターにご理解いただくとともに、一般社団法人オンコロジー教育推進プロジェクトの協力を得て、2010年度に第1回目の公募を始めました。それ以来の受賞者は次の通りです。

[敬称略、五十音順、所属は採択時のもの]

年 度 氏名・所属
2023年 西井和也氏(独立行政法人国立病院機構岩国医療センター呼吸器内科)
松井悠氏(国立大学法人富山大学附属病院皮膚科)
2022年 柴田祐司(国立がん研究センター東病院呼吸器内科)
宮川哲平(福島県立医科大学低侵襲腫瘍制御学講座)
2019年 宇田川響(国立がん研究センター東病院呼吸器内科)
瀬戸克年(東京医科歯科大学大学院呼吸器外科学)
2018年 秋山弘樹(東京医科歯科大学附属病院血液内科)
島津裕(日本赤十字社和歌山医療センター血液内科)
宮下穣(東北大学病院乳腺・内分泌外科)
2017年 菊池弥寿子(乳腺内分泌外科、東京大学医学部付属病院)
隈部篤寛(医学部放射線科学、慶應義塾大学)
服部正也(乳腺科、愛知県がんセンター中央病院)
2016年 喜多久美子(乳腺外科、聖路加国際病院)
西本光孝(医学研究科、大阪市立大学大学院)
宮内栄作(呼吸器内科、東北大学病院)
2015年 岩瀬俊明(臓器制御外科、千葉大学附属病院)
及川将弘(乳腺外科、にゅうわ会及川病院)
鳩貝健(消化管内科、国立がん研究センター東病院)
2014年 三浦裕司(臨床腫瘍科、虎の門病院)
森川直人
(呼吸器・アレルギー・膠原病内科、岩手医科大学)
2013年 河野美保(腫瘍内科、広島市民病院)
原野謙一(腫瘍内科、日本医大武蔵小杉病院)
2012年 塩崎隆也(産婦人科、三重大学、現在紀南病院)
並川健二郎(皮膚科、国立がん研究センター中央病院)
2011年 古川孝広(腫瘍内科、KKR札幌医療センター 斗南病院)
原尾美智子(乳腺外科、栃木県立がんセンター)
2010年 増田紘子医師(乳腺外科、大阪医療センター)